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化け物(良い意味)だ!「戦争と平和 全三巻」

生徒から「最近更新されてない」と貴重なご意見を賜ったので(ありがとう!N・Hくん!)、 昔の読書記録から引っ張ってきました。 記録によると2019年に読んだときの感想ですね。 昔のものですが、お楽しみいただければ幸いです。 尚、現在も読んでない訳では無いので、いずれ新作アップします。 もう少しお待ちください。 それでは、以下本編です。   「世界の十大小説」という本があります(1954年刊)。 これは、英国の作家サマセット・モームが書いた読書ガイドです。 「この中に出てくる10個の小説を順番に読んでみよう」と決めて、 まず手に取ったのが、今回の『戦争と平和』です。 翻訳物でいちばん怖いのは「誤訳」ですよね。 今回は一番誤訳が少ないと評判の「北御門訳」で、この名作に挑みました。 また、登場人物の多さも事前に耳にしていたので、人物相関図を作りながら読み進めました。 そして確かに多かったです(汗)。 しかし、読み進めるうちにそんなことも気にならなくなり、物語の面白さにどんどん没頭していきました。 描写がうまい。比喩がうまい。キリスト教の話が深い。 とにかく、格が違うと感じました。 五十年代後半から六十年代前半のハリウッド映画でよく使われていた「スペクタクル(規模が大きく、派手な場面が多い映画)」という言葉は、本作にこそぴったり当てはまると思います。 これだけの長さで、まったく退屈させず、むしろ先を読みたくさせるとは、本当に恐れ入ります。 著者の「歴史家も裸足で逃げ出す」ほどの下調べの成果にも脱帽です。 読了して振り返ると、 トルストイによる(当時の)歴史学に対するアンチテーゼ(=ある理論や主張に対して、反対の立場から反論・否定する考え方や主張)が主題なのだと思います。 皇帝であっても歴史の波に飲み込まれていく「人」として描くトルストイの眼差しは冷徹ですが、 キリスト教を通して見れば、皇帝の上に神が君臨しているのだから、これは当然の帰結なのだと思います。 オリジナリティあふれる歴史観と、徹底した聖書理解が合わさって、 世界的名作が生まれたのでしょう。 長大ですが、最高の小説でした。 タイトルについては、「戦争」そのものだけでなく、「心の中の戦争と平和」という意味も込められているのだと、読んでいる途中で気付きました。 もう、本当にね、これぞ小説です。 こんなのを読んで...