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これ分かってないとマズいよ「アルゴリズム・AIを疑う」

  いかにも流行に乗っかってる感じがする書名ですが、 「疑う」のはとても大切な行動だと私は思っています。 何に関しても批判的に物事を見るのは大切なことで、 何でもかんでも鵜呑み(うのみ)にしてしまうのは大人になればなるほど戒めるべき行為だと思います。 さて、書名にある「アルゴリズム」とは、 「入力」に対して必ず一定の「出力」を輩出することで、 身近なものだと自動販売機もアルゴリズムで動いてますし、 数学の計算なんてアルゴリズムそのものですね。 それが、インターネット上では Googleの検索結果であったり、 ネットをうろうろしている時に出てくるバナー広告なんかに使われているんですね。 私は何も気にせず、ネットでこれらを使ったり見たりしていたのですが、 ネットのアルゴリズムの場合は、 Googleであったり、通販サイトであったりの運営者の意図が介在していて、 「我々は誘導されているんだよ」と指摘したのがこの本の胆(きも)ではないかと思います。 ネットがここまで成長してしまったいま、 最早、運営者の意図の排除はできないので、 大切なことは「意図が介在している」と認識することが肝要であると本書は教えてくれます。 そんな訳で、 私がとった行動は「YahooやGoogleのニュースはもう見ない」で、 大手新聞社2社(保守系とリベラル系)をメインに見つつ、 ウォールストリートジャーナルで外国情報を収集という作戦を立てて、 実際にこの夏からスタートしてみました。 今まで見えなかった世界が広がる感じで、 出だしとしてとても満足してます。 一年続けることでどう変わるか、とても楽しみです。 また、タイトルにあるAIに関してはアルゴリズムに比べると少なめの論述で、 しかもAIのことを、 「過去のジャンク・フードのおいしいところだけ集めて合成した究極のジャンク・フードかも」(P.224)とLLM(大規模言語モデル)を誤解されている表現がなされており、 私は「ジャンク・フードだけ」なんてことはなく、「超高級料理からジャンク・フード、なんなら、食べ残しみたいなものまで、上から下まで全部合成した究極のフード」と考えてますので、この点は私と相容れませんでした。 著者はメディアの専門家なので、 「コンテンツ込みメディア」という従来にない技術「AI」に関してはこういう理解にとどまってしまったの...

題名通り!「世の中ががらりと変わって見える物理の本」

 本書の著者カルロ・ロヴェッリさんは 私が信奉している識者の一人です。 著者の2017年の作品「時間は存在しない」を以前読み、 その優美な筆致と物理の説明の解り易さで たちまちノックダウンされてしまいました。 「これはカルロを追わなくてはいけない」と手にしたのが本書です。 こちらは2014年の本なので「時間は~」の3年前の作品になります。 ベースになっているのは イタリアの新聞の日曜版で連載していた記事なので、 説明は一般向けで相変わらず易しく、理解が捗ります。 教えていただいたその中身は 相対性理論 量子力学 宇宙 素粒子 量子重力理論 ブラックホールを題材にした確率と熱 そして、人。 実は本書はとても薄いです。 その薄いページの中にこれだけがギュッと詰まっています。 哲学への造詣も深い著者は何度も哲学の言葉を引用しながら 私たち人間の自然の捉え方の不確かさを指摘します。 そう、世界はまだ不思議に満ちています! 私たちが見て、感じているこの世界が ありのままの姿ではないのです! 空間は膨らんでいるし、 時間は流れていないし、 人間の意識の出所はまだ不明です。 物理を突き詰めていくと形而上学に繋がってしまうようです。 あらゆる学問の源は哲学ですが、 それをこんなにも端的に著すことができるとは! やっぱり私はカルロ・ロヴェッリさんが大好きです。 文系の人にこそ読んでもらいたい素晴らしい一冊です。 カルロ・ロヴェッリ著 竹内薫監訳 関口英子訳 河出書房新社 2015年刊

コロナを題材に正しい思考法を学ぶ
「新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか」

 本書は、 第一作「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」 に続く二作目という位置付けの本です。 一作目の出版が2020年末。 一方、本作は2021年末の出版。 この一年間のコロナに対する科学と医療の進展、 そして、コロナを巡る状況の変遷を改めて概括してくれます。 こういう「現在進行形のもの」を学ぶ時に絶対に欠かせないのが 学んだ知識の更新です。 特に今回のテーマ「コロナ」に関しては進捗がめまぐるしいので 一年も過ぎれば浦島太郎になってしまうと思い本書を購入しました。 一番の進展は著者の一人峰宗太郎先生が ワクチンに対してポジティブに考えるようになったことではないでしょうか。 峰先生が 「第三層試験の結果や、実際の接種のスタート、公聴会などで示された、いくつものエビデンスを見て、これはリスクよりもベネフィット(利益)が明らかに大きい、と判断しました」と述べる通り、 この一年でデータの蓄積が成されたことで 数値を読めるようになったことが大きな進歩であったと思います。 ただやはり、前著でも触れられていた、 ワクチンによる10年先への副作用は未知のままということも 再度言及されています。 この白と黒の両方に触れる点が峰先生の信頼に足る部分であると 私は思っています。 ワクチンを車に例え 車の事故はゼロにはならないけど、 そのリスクを理解した上で車を選択するという話は解りやすかったです。 ワクチンの接種は最終的には個人の価値観で決定することで、 その為の思考の道筋、 最新のコロナ(今回は特に変異についての解説が良かった)とワクチン情報、 そして最大の読み所「学術論文の解説」という本書の構成は拍手ものです。 コロナは大迷惑なんですが、 こうして「どのように考えるか」を学ぶ機会を与えてくれた点だけは良かったのではないでしょうか。 コロナでさえも「災い転じて福と成す」です。 何からでも学べます。 今回、私は本書から「情報リテラシー」を学びました。 皆さんもいかがですか? 本書はその最大の助けになってくれますよー。 超お勧めです。 峰宗太郎 山中浩之 共著 日経BP 2021年刊

接種するべきか、せざるべきか、それが問題だ「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」

 こんなに「ワクチンワクチン」と世間はかしましいのに、 そう言えば、コロナワクチンのこと「なんとなく」しか解らない、、、、。 と、いうことでお勉強のために本書を購入しました。 お二方の対談形式の書籍です。 どんなお二人かと言いますと 一人目「峰宗太郎さん」アメリカ在住の米国立研究機関博士研究員の病理専門医で SNS、ブログで「正しい医療情報」を発信している(奥付より)お方。 二人目「山中浩之さん」素人代表。日経ビジネスの編集部勤務。 素人の山中さんがプロ中のプロの峰先生に質問する形で話がすすんで行くのですが、 いやー、おもしろかった! いきなりネタバレしまっす! 引用します! 「『知らないと不都合な真実』とは(中略)「『情報を簡単に信じる』『一度信じた情報を疑わない』姿勢を、 恐らく私やあなたを含めた人間全員が持っている、ということです。」(517ページ)  コロナやワクチンの話がほとんどの本書なのですが、 実は、それを使って人間の迂闊さや短絡的思考に気付かせるための本だった訳です!  難しい話題、例えばコロナワクチンに関して、自分は「良く分からない」としたら、 闇雲に専門家の言うことを鵜呑みにしてしまうような思考法に「ノー」を突きつける本です。 専門家といっても人間なので間違えるし、 新事実が判明して専門家の意見が変わることもあるからです。 「じゃあ、解らないことはどうするの?」  答えは「解らないことは学びなさい、自分で考えられるようになりなさい」と 本書は諭します。  世の中は「良く解らないこと」でいっぱいです。 これから先の人生、一々人に質問するの? その人は完璧で、絶対に間違えないの?  結局、頼れるのは自分、 しかも、自分の頭だけです。 学び続ける人が最強なのです。  ところで、本書の主題であるコロナのワクチンについてですが、 本書によれば、これも結局は 「まず、情報収集をしっかりする。 しかる後、ワクチンを接種する、しないは、個人々々の価値判断による」ということになります。  本書を読むことでワクチンの情報は収集できます。  ワクチンの種類(生ワクチン、不活化ワクチン、核酸ワクチンの違い)、 副反応、二回接種の意味、効果の持続性、長期的視点、といった辺りの情報が集約されてます。 これだけ頭に入れば、あとはその人の価値観に照らし合わせて、思考する...

スマホは怖い「スマホ脳」

 スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセン氏の「スマホ脳」という新書を読了。 精神科という視点からスマホ、 というかアプリの危険性を説く一冊。 スマホアプリによる影響は例えば、 集中力が落ちる、 睡眠不足になる、 社会的共感力がなくなっていく、 エトセトラエトセトラ。 アプリ制作者は脳科学の知見を利用して 科学的にアプリから(つまりはスマホから)離れなくなるように商品を作っているそうだ。 要は麻薬と同じ。 そういう風に作られているので、 対策としては「離れる」しかない。 作者はスマホの利便性を認めつつ 否定的側面の大きさに警鐘を鳴らす。 そういえば教室でも、 一昔前に比べると集中できない生徒が明らかに増加している。 寝不足の生徒も多い。 確実にスマホが原因とは断定できないが、 危うきには近寄らず、 できるだけスマホからは距離をとった方が得策のようだ。 大人でさえ影響を受けるのだから、 いわんや抵抗の弱い子供なら推して知るべし。 大人も子供も私も スマホとの付き合い方を考えなければならないと思う。 そのきっかけを本書が与えてくれる。 新書だからなのか参考文献がなく、 著者の言うことを信じて読むしかないのが残念な点。 それでも内容が陳腐になる訳ではないので著者を信じてみてもよいと思う。 子供にスマホを与えている親御さんも 与えられている子供達も そうでない親御さんも子供達も是非ご一読を。