エッセイの源流だ「エセー」
「エッセイ」というジャンルがあります。 日本語では「随筆」と訳します。 このエッセイという言葉の元となった作品が今作「エセー」です。 古い作品です。 本国フランスでの初版は1580年です。 江戸時代が1603年からなので、 いかに古いかが分かるかと思います。 また、大作です。 岩波文庫で読んだのですが全六巻でした。 マンガではないので活字本の六巻は中々に手強いです。 しかし、全巻読破した後の清々しさは人生の宝物です。 肝心の中身はといいますと 作者モンテーニュが思うままにつらつらと、 主題毎に思うところをまとめるスタイルです。 ただ、その主題が人生の根っこに関わる重いものばかりで、 学んでも学んでも追いつきません。 上で「思うところ」とは書きましたが、 モンテーニュ自身がとんでもない読書家で その「思うところ」が哲学者裸足の意見です。 ちょっとやそっとの人間では刃向かうことができない聖人ぶり。 しかも人間としての生活をしっかり見据えての聖人なので、 よくある「隠遁しないと無理」ってタイプの聖者ではありません。 引き合いに出されるのが ソクラテス、プラトン、アウグスティヌス、セネカなどのお歴々やギリシャ神話。 こんなのたまったもんではありません。 モンテーニュは「借り物の意見」という風に述べますが、 賢者達の意見を否定することもためらわず、 しっかり自身の意見に昇華させています。 「こんな人がかつて生きていたのか」とため息が出ます。 こうありたいと思いながら、 今の自分を省みて恥じ入るばかり。 でも、それでこそ人生。 少しでもモンテーニュに近づこうとあがいていきたい所存です。 モンテーニュ著 原二郎訳 岩波書店 1965年刊