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人間は変わらない生き物であると再認識 「ガリア戦記」

 今回はかなり古い本を読みました。 「ガリア戦記」という今から2000年も前に書かれた戦いの記録です。 「戦い」とは、紀元前58年~51年に及んだ、ガリア(今のフランス)での戦闘の記録です。 筆者はカエサルです。 彼は古代ローマの政治家であり軍人で、この本によりますと、 ローマ軍は連戦連勝を繰り返していて、軍人としては傑物であったことがうかがえます。 感慨深かったのは、こんなにも昔から人々は領土を奪い合い、 殺し合いをしていたという事実です。 そして、こんなに頑張ってガリアをすべて手に入れたローマも、 歴史的な目で見れば終いには崩壊するという儚(はかな)さですね。 ガリアで多くの人命が失われたようですが、 結局、あらゆる戦いというものは無意味なものであると思ってしまいました。 「勝つ」とか「負ける」ということにどれほどの価値があるというのでしょう。 「国家」というシステムにどれほどの価値があるのでしょう。 「国」も実は世界規模での思い込みなんです。 みんなが「日本である」と意識しているから、日本は日本として存在できてるんです。 あるかのように見えていますが、実のところは存在していない。 人類の空想の産物であることを忘れてはいけないように感じます。 読み物としては久しぶりに困難を来しました。 というのも、繰り返し現れる部族名、個人名が一向に頭に入らない! 一例を挙げると、 ●部族名 ビトゥリゲス族・ボイイ族・ハエドゥイ族・ベッロウァキ族・トレウェリ族etc. ●個人名 カトゥウォルクス・サビヌス・アンビオリクス・ウェルキンゲトリクス・トレボニウスetc. こんな感じです。もちろん、これはほんの一部です。 ここは最後まで慣れませんでした。 これは当時の風習なので致し方ないのですが、とても辛かったです。 最後に、本書で私が得た教訓は「気を見て敏な者が勝利する」という法則です。 第七巻でカエサルが、 「この困難は、ただ機敏な行動によってのみ克服される。成功は戦闘そのものにではなく、機会を上手くつかむことにある」と訓示した言葉に全てが集約されています。 これは、あらゆる方面で使えそうなので、ここは私も今後の人生に生かしていきたいと思いました。 さあ、みなさん、紀元前の世界に旅立ってみませんか? かなり手ごわい本ですが、歴史や戦いの話に興味がある人、 読書に自信がある人...

批判的読書とは「入門 シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才」

経済学者シュンペーターの入門書です。 シュンペーターは20世紀に活躍した経済学の巨人で、 「経済はどうやって発展するのか?」を理論として構築した偉大な学者です。 この本を書かれたのは、経済産業省の官僚である中野剛志さん。 東大卒業後、エディンバラ大学で政治学の博士号を取得されています。 さて、珍しく著者のプロフィールを調べたのには理由があります。 実は、読んでいて「これは本当にシュンペーターの理論なのか?」と疑問に思う部分があったからです。 それは「MMT(現代貨幣理論)」と呼ばれる理論が出てきた箇所です。 MMTを簡単に説明すると、「国の借金は気にしなくていい。 なぜなら自分の国の通貨を発行できるから破綻しない。だから積極的に財政支出しようぜ!」 という理論です。 Googleで「現代貨幣理論」と検索すると、 「(前半省略)~しかし、中央銀行への信認喪失や通貨の下落による深刻なインフレのリスクがあるため、 実現は困難との見方もあります」という説明が出てきます。 つまり、まだ議論の分かれている理論なんです。 この理論が本の「まとめ」の位置に入っていたのには驚きました。 なぜなら、MMTは1990年代~2000年代に体系化された理論で、 1950年に亡くなったシュンペーターとは直接関係がないからです。 入門書でこんなことをやられてしまってはたまったものではありません。 初学者は気付かず「MMT=シュンペーターの理論」と勘違いしてしまう可能性が高くなります。 入門書という本書の性格を考えると、編集の段階でストップが入ると良かったのにと考えさせられてしまいました。 こうした理由で、前半のシュンペーター解説は勉強になったのですが、 後半は著者の主張が混ぜられていたため、慎重に読む必要がありました。 「本に書いてある」からといって、全てが正しいわけではありません。 大切なのは 「これって本当かな?」 「前と矛盾してないかな?」 「著者の意見が混じってないかな?」と、自分の頭で考えながら読むこと。 それが本当の「読書力」です。 皆さんも、しっかり読む力を身につけて、 何が正しいのか自分で判断できる大人になってください。 さて、私はシュンペーター本人が書いた本を注文しました。 今度は著者のフィルターを通さず、 ご本人から直接、教えを請いたいと思います。 中野剛志著 PHP研究所 ...