批判的読書とは「入門 シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才」

経済学者シュンペーターの入門書です。
シュンペーターは20世紀に活躍した経済学の巨人で、
「経済はどうやって発展するのか?」を理論として構築した偉大な学者です。

この本を書かれたのは、経済産業省の官僚である中野剛志さん。
東大卒業後、エディンバラ大学で政治学の博士号を取得されています。
さて、珍しく著者のプロフィールを調べたのには理由があります。

実は、読んでいて「これは本当にシュンペーターの理論なのか?」と疑問に思う部分があったからです。

それは「MMT(現代貨幣理論)」と呼ばれる理論が出てきた箇所です。
MMTを簡単に説明すると、「国の借金は気にしなくていい。
なぜなら自分の国の通貨を発行できるから破綻しない。だから積極的に財政支出しようぜ!」という理論です。

Googleで「現代貨幣理論」と検索すると、
「(前半省略)~しかし、中央銀行への信認喪失や通貨の下落による深刻なインフレのリスクがあるため、
実現は困難との見方もあります」という説明が出てきます。
つまり、まだ議論の分かれている理論なんです。

この理論が本の「まとめ」の位置に入っていたのには驚きました。
なぜなら、MMTは1990年代~2000年代に体系化された理論で、
1950年に亡くなったシュンペーターとは直接関係がないからです。

入門書でこんなことをやられてしまってはたまったものではありません。
初学者は気付かず「MMT=シュンペーターの理論」と勘違いしてしまう可能性が高くなります。

入門書という本書の性格を考えると、編集の段階でストップが入ると良かったのにと考えさせられてしまいました。

こうした理由で、前半のシュンペーター解説は勉強になったのですが、
後半は著者の主張が混ぜられていたため、慎重に読む必要がありました。

「本に書いてある」からといって、全てが正しいわけではありません。
大切なのは
「これって本当かな?」
「前と矛盾してないかな?」
「著者の意見が混じってないかな?」と、自分の頭で考えながら読むこと。

それが本当の「読書力」です。

皆さんも、しっかり読む力を身につけて、
何が正しいのか自分で判断できる大人になってください。

さて、私はシュンペーター本人が書いた本を注文しました。
今度は著者のフィルターを通さず、
ご本人から直接、教えを請いたいと思います。

中野剛志著
PHP研究所
2025年刊

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