しんどいマンガだ「タコピーの原罪」上下巻

「原罪」はキリスト教の言葉です。
詳しく述べると長くなるので簡単に言いますと
「全ての人間が産まれながらにもっている神様に背いているという罪」の事です。

タイトルからして重いのですが、
実際、重い、重い、重い漫画でした。
それでも、漫画としてこのような内容をここまで表すことができるという一つの痕跡を漫画史に刻んだことになったと思います。

SFを下敷きにはしていますが、
中心主題は人間と人間の間の負の連鎖です。

「ストレスのはけ口は常に弱者であり、
弱くなると諦念から無気力になり自死を選ぶことが多々あり救われない」という
まぁ、言ってしまえば創作としてはありふれた主題なんですが、
陽キャラ「タコピー」を絡めることによって、
これまでのそうしたテーマの作品群からは抜きん出た作風となっています。

全二巻の短めの漫画でしたが、読んでいる最中は苦しくって
「早く終わってくれ」と思いながらページをめくっていました。

なんで苦しい思いをしてまで漫画を読むのやら。

こうした作品が出てくるまでに日本の漫画界が成熟しきっている証拠なんでしょうが、
世界に誇る「MANGA」の成長は歩を緩めません。
読み手をあの手この手で裏切るその手法はどこまで上り詰めるのでしょう。

正直、本作は万人受けとは思えません。
漫画が好きで好きでたまらなくって、
これまで浴びるほど読んできた方であれば面白く受け止めることができると思います。

しかし、少年、少女達は、もっと真っ直ぐな王道漫画を沢山読んだ後、
一種の下手物食いの気持ちで本作を一読することをお勧めします。

漫画の表現形式の一つとして面白い作品が生まれました。
これに触発されて、新たな作品が読めることを大いに期待しています。

陰鬱だけど素晴らしい。
今回はまったく、やられました。

タイザン5
集英社
2022年刊

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