面白かったけど、、、「デイヴィッド・コパフィールド」

「世界の十大小説」という本があります。
イギリスの作家サマセット・モームが1954年に刊行したもので、
タイトル通り、モームが選んだ世界のトップ10小説を紹介する書物です。

「この10作品を読破したいなぁ」と思い、手始めに読んだのが
トルストイの「戦争と平和」でした。
これを読み終わった時にはもう、感激の嵐で
「読んでよかったぁあああ」と心底思ったものです。

そんな十大小説からの2作品目がこの「デイビッド・コパフィールド」です。
チャールズ・ディケンズによって1800年代半ばに書かれた作品です。

とても良い作品だったのですが、残念な点もあって、
手放しで絶賛はできない作品でした。

最大の難は「翻訳の古さ」です。
翻訳者は明治生まれの英文学の泰斗なんですが、
さすがに令和のいま読むには読み辛い訳と感じました。

作中に、手紙を書くのが大好きで、
その言葉遣いがずば抜けている男性が出てくるのですが、
その手紙の訳が漢文調であるのは流石に時代錯誤であると思いました。


自然な訳で良い箇所も多々あるのですが、手紙の訳の他にも、女性言葉の古めかしさ、
田舎言葉の古さなどが私は気になりました。

訳者がすでに鬼籍には入っておられるので、そのまま刊行しているようです。
作品自体が古いので、元の英語も恐らく読みづらいことだと思います。
だから訳も「敢えて」という部分もあるのでしょうが、
そこは翻訳作品であることを逆手にとって、
もう少し読み易い言葉で訳してもよいのではないかと思います。


また、ストーリーの展開がかなり強引で、
クライマックスの辺りは荒唐無稽な偶然の話になっていて、
ここも興ざめでした。
(モームによれば、当時は悪者は必ず倒されなければならなかったそうで、やむを得なかったようですが)


悪いことばかり書き立てましたが、
まるで目の前の本物の人間を描写しているかのようなキャラクター達の存在感は際立っていました。
読み終わったあとも、
まだみんなどこかで生きているかのような錯覚すら覚えてしまいます。


娯楽として読む小説にはうってつけです。
訳がこなれていれば日本でももっと多くの人々に読まれるのではないかと思います。

難はあっても、歴史の重みに耐えてきた名作の力は充分に味わえます。

さて私は、もう一度、別の方の訳で読み直してみたいと思い、
新たに岩波版を全五巻買い直しました。

二回目楽しみ♪

チャールズ・ディケンズ著
中野好夫訳
新潮社
1967年

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